こんな症状ありませんか?
最近物忘れが多くなった、というのは年をとればどなたでも経験があると思います。
しかし、今までできていたことが急にできなくなった、通い慣れた道を忘れた、財布やカードなど大切なものを頻繁になくすようになった、などあれば一度専門外来を受診したほうが良いかもしれません。
ご本人やご家族が見て、次のような症状はありませんか?
- 大切な約束を忘れてしまう
- ものの置き忘れやしまい忘れが増えた
- 物の名前が思い出せなくなる
- 物事を理解したり、判断する能力が衰える
- 意欲が少なくなってきた
- いつも飲んでいる薬の管理ができなくなった
- 通いなれた道で迷った
- 火の消し忘れや水道の締め忘れが多くなった
- 似たような献立が毎日続くようになった
- 時間や場所の認識が不明確になってきた
- 同じことを繰り返すようになった
- 人柄が変わり、怒りっぽくなった
- ものを盗まれたと騒ぎを起こすようになった
もし当てはまる点があれば、一度ご相談されることをおすすめします。
的確に診断し、認知症の早期治療につなげていくことはとても大切です。
ご家族がご本人をお連れして直接外来に受診することが難しければ、オンラインでご家庭から相談できます。
※通常の診療と同様に保険適応です。初回の診療料は症状にもよりますが、およそ5,000円です。カードで決済できます。
お薬が必要な場合はオンライン服薬指導が可能な薬局をご紹介しますので、ご自宅にいながらお薬を受け取れます。
当院の特徴
入院施設や入居施設がある

当院は専門外来であるもの忘れ(認知症)外来があるだけでなく、入院施設や入所施設も併設しています。
現在では無床クリニックでも同様の専門外来を標榜しているクリニックがありますが、入院して手厚いケアを受けることができません。
また認知症は長い時間をかけて少しずつ悪化するケースが多い疾患です。
当院では認知症の方を受け入れる専門病床が60床あり、症状が悪化しても一貫して受け入れる体制が整っています。
症状によって転院を繰り返すのはご本人に大きな負担になるだけでなく、ご家族も大変です。
当院であれば、ご本人やご家族の方も安心して治療を受けることができます。
オンライン受診ができる
認知症の治療では通院などにご家族の協力が必要となってきます。
これは数年から十年以上に渡るため、ご家族の負担が少ないことも大切です。
当院は認知症についてオンライン受診が可能ですので、ご家庭にいながら感染などのリスクを避け、受診することが可能です。
北海道では冬季に雪道を運転してご家族を連れてくるのは、とても大きな労力が必要です。
患者さんご本人にもストレスとなります。
当院であればそうした労力を避け、持続可能な通院治療が可能です。
認知症の種類
アルツハイマー型認知症
アミロイドベータというタンパク質が脳に蓄積し、神経細胞が壊されることが原因でおこる認知症です。
認知症全体の60~70%がアルツハイマー型認知症と言われ、認知症の中で最も多いタイプです。
進行すると神経細胞が情報をうまく伝えられなくなり、多くの生活機能に異常を来します。
着脱衣、入浴、排泄などができなくなったり、更に進行すると喋らなくなり、歩行、表情、食事の能力にも影響がでてきます。男性と比べて女性に多いようです。
脳血管型認知症
脳血管型認知症は脳の血管の病気が原因でおこる認知症です。
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などによって脳の血管が詰まったり出血することで、脳の神経細胞に酸素が行き渡らず神経細胞が障害されることで起こります。
障害の程度は脳の血管の病気の場所や程度によって異なります。
脳血管型認知症は認知症の20%程度を占め、アルツハイマー型認知症に比べて男性の割合が高くなっています。
また高齢者のみが発症するわけではありません。
若い世代の発症もみられますが、原因の脳血管障害の特定に至らず、高次脳機能障害と診断されるケースもあるようです。
レビー小体型認知症
脳の神経細胞にレビー小体というタンパク質の塊ができ、神経細胞が破壊されることで発症します。
レビー小体は脳の神経細胞だけでなく全身の神経にも発生します。どこの部位に多くできるかによっても症状が異なります。
また認知機能が良いときと悪い時が波のように繰り返し変化するため、病気と思われず、進行してしまう場合があります。
特に初期では認知機能の低下が目立たない場合があります。
レビー小体型認知症は認知症の15~20%を占め、他の2つと併せて三大認知症の一つです。
脳器質性精神障害
外傷や脳梗塞のように直接的に脳に障害が生じたり、内分泌疾患(ホルモンの分泌の失調)によって脳に障害が生じても、認知機能の低下が起こることがあります。
またイライラ、興奮、身体の疲労感など意識の変容や、幻覚や妄想の症状が出ることもあります。
原疾患の治療が可能であればその治療が優先されます。
気になる症状がある場合はこちら
認知症と診断されたら
ご家族などが認知症かな、と感じたら早めに医療機関へ相談し、早期に治療を開始することが大切なことは前述の通りです。
では実際に認知症と診断を受けた場合は、どのようにしたら良いでしょうか。
認知症の患者さんをご家族だけで支えることは、とても大変です。
そこで積極的に地域の支援の輪を活用していくことになります。
支援の種類としては、医療機関(認知症専門医のいる病院など)、介護施設、ケアマネージャーや行政サービスがあります。
現在では厚生労働省の方針(いわゆる新オレンジプラン)に従い、認知症の方を地域全体で支え、孤立せずに支援を受けられる体制整備が進んでいます。
「新オレンジプラン」とは
認知症の患者数は2025年には700万人になり、65歳以上の実に5人に1人に達すると言われています。
そこで厚生労働省は、認知症の患者さんの意思が尊重され、住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らし続けることができる社会、すなわち認知症高齢者に優しい地域づくりを目標とした方策を策定しました。
この平成27年に策定された認知症施策推進総合戦略を“新オレンジプラン“と呼んでいます。
これは以下の7つの柱に沿って施策を推進するものです。
- 普及・啓発
- 医療・介護
- 若年性認知症
- 介護者支援
- 高齢者に優しい地域づくり
- 研究開発
- 認知症の方やご家族の視点の重視
この中で具体的にあげられているように、医療だけでなく、介護や介護者の支援、地域の支援など多方面からのサポートを受けられるようになってきています。
これらの情報を的確に得て、活用していくことが認知症の方やご家族にも必要といえるでしょう。
医療機関
認知症に関わる医療機能としては次のようなものが挙げられます。
- ①認知症の診断な可能な認知症疾患医療センターや専門的な診断が可能な医療機関(精神科、神経内科、脳神経外科など)
- ②認知症の人を継続的に診療できる専門医療機関(外来診療、訪問診療まで総合的に提供できる医療機関)
- ③認知症の症状が悪化したときに入院治療に応じられる医療機関(主に認知症治療病棟を持つ精神科病院)
- ④認知症の患者さんの身体管理も含めて継続的に診療ができる一般化の病院、クリニック
こうした機能別の医療機関がお互いに連携することが大切ですが、当院では診断から入院まで幅広い医療機能があり一貫して対応が可能です。
介護保険サービス
介護保険サービスは下記のように多種類があります。
- ①訪問系サービス: ご自宅で入浴・食事・排泄などの介護のサービスを受ける
- ②通所系サービス: デイサービスのように施設に通ってリハビリなどのサービスを受ける
- ③地域密着型サービス: 小規模多機能型居宅介護(※1)のように施設への通いや居宅でのサービスを一貫して行う
- ④入居・入所系サービス: グループホーム(※2)のように施設に入所して介護やリハビリなどのサービスを受ける
介護サービスは症状の度合いによって認定を受けなければなりませんが、医療ではカバーができない生活面のサポートを得られます。
認知症ではBPSD(※3)と呼ばれる行動・心理症状が多く現れるため、自宅で介護する方に大きな負担がかかります。
介護する方の72%に抑うつ反応が示されるという報告もあるくらいです。
そこでグループホームなど認知症に特化した入居・入所系サービスを利用することも検討されます。
当院では敷地内にグループホームを複数擁しており、ご家族の負担も軽減しながら手厚いサポートを提供できます。
(※1)小規模多機能型居宅介護
認知症が中等度や重度となっても在宅での生活が継続できるように支援することを目的としています。
そのため通所サービスの提供が中心ですが、要介護者の様態や希望に応じて随時訪問サービスや宿泊サービスを組み合わせて提供できます。
この場合、事業所の見慣れたスタッフ(同じサービス提供者)からサービスが提供されることになり、利用者にも安心感があります。
(※2)グループホーム
認知症対応型共同生活介護とも呼ばれ、認知症の方が少人数で共同生活を送れるような介護施設です。
認知症の方に家庭的な環境で、入浴・排泄・食事など日常の生活の補助や機能訓練を行うことで可能な限り自立した生活を支援することを目的としています。
地域包括支援センター
市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士、主任介護支援専門員を配置したチームアプローチにより、保健医療の向上および福祉の増進を包括的に支援することを目的とした施設です。
地域包括支援センターの業務には①介護予防ケアマネジメント業務、②総合相談支援業務などが含まれます。
- ①介護予防ケアマネジメント業務
要支援1または2と認定された方や支援・介護が必要になる恐れが高い方を対象に、自立して生活できるように介護保険や介護予防の支援を実施する。 - ②総合相談支援業務
住民の各種相談を幅広く受け付けて、制度横断的な支援を実施する
認知症の治療
現在の認知症の薬物療法について説明します。
代表的なアルツハイマー型認知症の治療薬は下記のような分類です。
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬
脳の神経細胞の間のシナプスにおいて、伝達物質アセチルコリンが減少してくると神経経路の減衰が起こると考えられています(認知症のように神経の働きが十分でなくなる)。
なのでアセチルコリンの量を減らさないようにするのがアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の働きです。
シナプス間隙に放出されたアセチルコリンは、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)とブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)によって分解されます。
これは神経の正常な情報伝達にも必要なことですが、減りすぎると前述のように神経回路の減衰が起きてしまいます。
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、AChEを抑える働きがあり、結果的にアセチルコリンの量が減少しずらくなる薬です。
これらの作用を持つのは、ドネペジル塩酸塩(アリセプト)、ガランタミン臭化水素(レミニール)、リバスチグミン(リバスタッチパッチ、イクセロンパッチ)などが代表的です。
APL作用剤
AChEの中でガランタミン臭化水素(レミニール)はAPL作用を併せ持っています。
これはアセチルコリンの到達点であるアセチルコリン受容体に作用して、アセチルコリンの効果を増強する働きがあります。
ブチリルコリンエステラーゼ阻害剤
AChEの中でリバスチグミン(リバスタッチパッチ、イクセロンパッチ)はブチリルコリンエステラーゼ阻害作用(BuChE)も併せ持っています。
このブチリルコリンエステラーゼはアルツハイマー病の病態が進行するにつれて増加するブチリルコリンエステラーゼの活性を抑えるため、理論的には病態が進行しても効果的に働くと考えられています。
NMDA受容体拮抗剤
大脳皮質や海馬似高密度に存在するNMDA受容体は、神経伝達物質であるグルタミン酸が結合することで、記憶に関する長期増強などの役割を担っています。
アルツハイマー病ではシナプス間隙においてグルタミン酸濃度が高く、このためシナプス間での情報伝達に障害が起きていると考えられています。
NMDA受容体拮抗剤はNMDA受容体を部分的に遮断して、情報伝達を改善させます。結果的に神経細胞障害を抑制します。
アルツハイマー型認知症治療剤のまとめ
一般名(商品名) | ドネペジル塩酸塩(アリセプト) | ガランタミン臭化水素(レミニール) | リバスチグミン(リバスタッチパッチ、イクセロンパッチ) | メマンチン塩酸塩(メマリー) |
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作用機序 | AChE阻害 | AChE阻害+APL作用 | AChE阻害+BuChE阻害 | NMDA受容体阻害 |
適応 | 軽度~高度AD | 軽度~中等度AD | 軽度~中等度AD | 中等度~高度AD |
用法用量 | 1日1回3~10㎎/日 | 1日2回8~24㎎/日 | 1日1回4.5~18㎎/日 | 1日1回5~20㎎/日 |
剤形 | 錠剤・OD錠・細粒・ゼリー | 錠剤・OD錠・内用液(瓶包装・分包品) | パッチ剤 | 錠剤 |
主な副作用 | 消化器症状 | 消化器症状 | 消化器症状、皮膚症状 | 頭痛、めまい |